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苗立ち安定にむけた水稲湛水直播栽培技術

-酸素発生剤(カルパー粉粒剤16)コーティングのポイント-

 目 次

     
     
       
     
     
     
     

 水稲直播栽培の概要

(1)直播栽培は育苗が不要であるため大幅な省力化が見込め、野菜や花卉などの生産あるいは水稲のさらなる規模拡大が可能になります。

(2)春作業の大幅な軽減により女性や高齢者にも喜ばれます。

(3)全国の直播栽培の作付面積も年々増加し、収量も栽培技術の習熟に伴いほぼ移植栽培並みになっています。

(4)直播栽培の成果を挙げるには初期の栽培技術の徹底が重要です。

 品種の選定と種籾の準備

(1)品種の選定

・優良品種を使用する。
 ※ 移植栽培と栽培条件が異なる点に注意して品種を選択する。

(2)種籾の収穫・調整

・枝梗(しこう)、芒(ぼう)がなく、損傷のない種籾を用いる。
 ※1 枝梗、芒等があるとカルパーコーティング、機械播種の際にトラブルを生ずる原因となるので必ず脱芒を行う。
 ※2 播種時に種籾に傷がつくと出芽率が著しく低下するので、機械的損傷を与えないよう万全を期す。
 ※3 種籾に傷をつけぬよう脱穀機、脱芒機の回転数を落とす。
・予定量の1.5~2倍量を準備する。

(3)塩水選

・出芽・苗立率を高めるため必ず塩水選を実施し、発芽率・発芽勢の良い充実した種籾を使用する。
・液比重  ウルチ1.13 モチ1.08
・終了後よく洗浄する。

(4)種子消毒

・薬剤処理は育苗箱の場合に準じる。

(5)浸漬・催芽

・乾籾を網袋に入れ浸漬する。
・直射日光の当たらない場所に置き、1日1回の水交換する。
・ゆっくり吸水催芽し、鳩胸程度に止める。
・目安として水温15℃以下で4~6日間浸漬する。(日平均水温積算値60~80℃)
 ※1 鳩胸とは種籾が十分吸水した状態をさし、発芽したものではない。
 ※2 種籾の芽が伸びていると、コーティングの作業中に芽が折れて出芽率を低下させる。また、種籾のコーティングが播種作業中に剥がれ易くなる。

(6)水切り

・通風のよい場所で、網袋を床面から離して水切りする。または脱水機で3分間脱水する。(自動コーティング機では必須)
 ※ 水切りが十分でないとコーティングマシンの底面に種籾が付着し、コーティングが均一にできない。

ポイント:催芽のばらつきによってコーティング後の状態が異なる。コーティング籾のはがれ、播種機の繰り出し部の詰まりなどがおきやすい。

   
催芽籾   コーティング籾
   

 酸素発生剤コーティング

カルパー粉粒剤16

(1)カルパー粉粒剤16は、過酸化カルシウムを有功成分とする農薬で湛水土壌中では水と反応して徐々に分解し、酸素を発生する。

CaO2  +  H2O  →  Ca(OH)2  +  1/2O2
(過酸化カルシウム)+(水) → (消石灰)+(酸素)
この酸素が湛水土壌中で種籾の発芽を促進する役割を果たす。

(2)カルパー粉粒剤16の種籾への固着は、焼石膏が水分を吸収する性質を利用している。

CaSO4・1/2H2O  +  3/2H2O  →  CaSO4・2H2O

  Ⅰ.種籾コーティングに必要な機材

(1) カルパー粉粒剤16 (以下カルパー剤)

・乾燥種籾重量の等倍量~2倍量(北海道は等倍量)
・包装形態 3kg入り8袋/箱

※1 カルパー粉粒剤16の組成:過酸化カルシウム 16% 焼石膏等の鉱物質 84%

※2 吸湿しないよう乾燥した涼しい場所に保管する。

※3 浸種前に種籾を秤量しておき、その2倍量の カルパー粉粒剤16を使用する。(北海道では、播種深度を浅くするので等倍量とする。)

※4 乾燥種籾の状態で秤量できなかった場合は播種種籾を十分水切りしてから秤量し、それに1.6(北海道では0.8)を乗じた数値をカルパーコーティング量とする。

(2) コーティング機械(手動または自動)

・手動式コーティング機(回転パン直径100cm)
 乾籾10kg/1回(2倍量)
 15kg/1回(等倍量)

手動式コーティング機

・自動コーティング機(回転パン直径100cm)
 カルパー剤と水供給を自動化
 乾籾10~20kg/1回

自動コーティング機

(3) 必要な小道具

水道水用耐圧ホース(網入り)
ステンレス製ヘラ(パン上付着物剥離用)
金属製タワシ(パン面の掃除用)
取り出し用てみ(プラスチック製)
ちりとり(プラスチック製)
ハサミ、はかり、網袋、ゴザ

小道具の例

  Ⅱ.手動コーティング

(1) 準備

・平らな場所に設置する。

・パン角度を下部鎖で調整し、均一なコーティング種籾をつくる。
 関東(50ヘルツ)
 関西(60ヘルツ)

・ノズルとホースのつなぎは水漏れのないようにしばる。

・腰の高さの椅子を準備する。

   
クサリの長さ調整   ノズルとホースのつなぎは水漏れがないようにしばる。   カルパー剤投後は次の投入まで座って待つ。

(2) ポイント

・回転しているパンに所定量の種籾を投入し、カルパー剤を少量ずつ投入する。
・カルパー剤が種籾に付着し、余分なカルパー剤がパン面の右上部から飛びはじめたらノズルをセットし、水の連続噴霧を開始する。

種籾の流れを確認し徐々にカルパー剤を投入する。

・水の噴霧位置はパン面の中心より右上側。ノズルから出た水を種籾のない部分と渦(左部分)にかからないようにする。水の噴霧形状は円筒状になるように水量を調整する。

水をあてる位置

・カルパー剤の投入は袋を両手でもち、回転面中のパン面下部に袋の先端をつけるように徐々に投入する。
・投入一時停止は種籾に付着しないカルパー剤がパン面の右上部にみえるようになったときを目安とする。水は連続噴霧しながらカルパー剤による白い縞模様がなくなるまで回転させる。
・カルパー剤再投入は白い縞がみえなくなり均一な色になった時を目点とする。

カルパー剤投入位置

・カルパー剤全てを投入終了し、均一な色になった時点で水の連続噴霧を止める。
・そのまま3分間空運転する。仕上げに少量のカルパー剤を投入する。

仕上げのカルパー剤

・回転パンを回転させたまま口からみを使ってコーティング種籾を取りだす。
・種籾10kgのコーティング時間は約15~20分が目安。

みで取り出す。

  Ⅲ.自動コーティング

(1) 準備

・平らな場所に設置する。

・パン角度を調整する。

・回転周波数を調整する。

・表示板の運転モードを目的のコーティング量にあわせる。

・ホッパーへのカルパー剤投入量は繰り出し部に貯まる量を考慮し、9kg以上余分に投入する。

   
自動コーティング表示板   パン角度調整   繰り出し部にもカルパー剤が必要。

(2) ポイント

・水圧は所定圧0.2Mpaになるよう調整する。

水圧確認を忘れずに。

・連続作業なのでカルパー剤を随時補給する。

カルパ-剤を補給する。

・貯水タンク(バケツ)の水量を随時確認し、補給する。

水の補給を忘れずに。

・殺虫剤アドマイヤー水和剤や殺菌剤タチガレエースはコーティングの中間で入れる。

殺菌、殺虫剤のサンドイッチ処理

・自動コーティング機には脚(付属品)をつけて作業しやすい高さにする。

脚をつける。

・コーティング種籾は一輪車に取り出すと作業が早い。

一輪車で取り出す。

  Ⅳ.コーティング種籾の陰干し

・ゴザの上に広げて、陰干しする。約20分程度の陰干しで収袋する。

・コーティング種籾は網袋に入れて風通しの良い室内に床面から離して保存する。

・2日以上保管する場合は乾燥を防ぐためゴザをかける。

・収袋の際はじょうごなどを用いると便利。

・コーティング種籾(2倍量の場合)の重量は、乾燥種籾重量の3.5~3.55倍の重量になる。

・圃場への運搬もそのまま網袋を利用する。

 
  コーティング種籾はゴザに一時広げ陰干する。

   
パレットなどにのせ、通気よく保管する。   収袋の際にじょうごなどを使う。   2人で収袋作業を行う。

  Ⅴ.後片付け

手動コーティング機

・パンを回転させたまま、パン面の付着物を金属製タワシで剥がし、ちりとりで付着物を取り出す。

・パン面を布でふき取る。

   
金属製タワシで壁面を掃除する。   ヘラで掃除する。   ちりとりで付着物をとる。

自動コーティング機

・パン面を布でふき取る。

・繰出し部分に残ったカルパー剤をブラシ等で取り除く。

・水洗い厳禁

  布でふきとる。
ブラシで取り除く。
 

     
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